紹介している記事に表れている事象の多くは「 組織設計の問題」であることが多いです。
当事務所では、
・意思決定の整理
・管理職の役割設計
・業務の標準化
・AIによる再現化 
を通じて、組織が自走する仕組みを構築します


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・なぜ組織が回らないのか
・何から手をつけるべきか
を明確にします。

何故組織が回らなくなるのか
社長が経営業務に集中するためのヒント

最低賃金、なぜ揉めるのか 審議会「答申持ち越し」の舞台裏と経営者の備え

 

賃上げ対応で終わらせるか、評価軸を磨き直す機会にするか。差がつくのはここ

 各地の最低賃金審議会で、労使の意見対立により答申が相次いで持ち越されています。鹿児島県では、厚生労働省が示した引き上げ目安の56円に対し、労働者側委員が89円、使用者側委員が41円を主張し、48円の隔たりが埋まらないまま8月10日の会合を終えました。次回は8月18日に開催予定です。青森県でも同様に、労働者側の66円と使用者側の39円の間で27円の差が生じ、8月20日に審議が持ち越されました。使用者側委員からは、物価高や地政学情勢を背景に「今後の見通しを立てるのが非常に厳しい」との声が上がっています。結審後は早ければ10月中旬から新しい最低賃金が適用される見通しです。

出典:Yahoo!ニュース(鹿児島県版)

 

 最低賃金の引き上げを、単なる人件費増加の問題として片付けてしまうと、組織を強くする好機を逃します。最も見落とされがちなのが、時給の底上げによって新人とベテラン、非管理職と管理職の賃金差が縮まる「賃金の圧縮」です。多くの経営者はこれを「不満が出そうだから金額を調整する」という防御的な対応で終わらせますが、本質的な問いは別のところにあります。それは「なぜベテラン社員や管理職の給与が高いのか、その理由を会社として言語化できているか」という点です。理由が「勤続年数」だけであれば、最低賃金の上昇によってその差はいずれ消えてしまいます。一方、理由を「任せている仕事の幅」「意思決定の裁量」「後輩育成への貢献」として明確に説明できれば、今回の賃上げは評価軸そのものを磨き直す契機になります。今回の審議会の攻防は、経営者が人事や総務に任せきりにせず、自ら「何に対価を払っているのか」を管理職にも腹落ちする形で語り直す好機と捉えるべきです。単なるコスト対応で終わらせるか、組織の評価軸を再設計する機会にするかで、数年後の定着率と現場の活気には大きな差が生まれます

【企業の対応アクション】
・現在の時給・月給を最低賃金と照合し、影響を受ける従業員を洗い出す
・厚労省目安(今年は56円引き上げ)を基準に、複数シナリオで年間人件費への影響を試算
・最低賃金引き上げにより正社員との賃金差が縮まっていないか確認する
・賞与、割増賃金、社会保険料の算定基礎への波及影響を確認する
・審議会の結論を待たず、10月の適用開始に向けて就業規則・雇用契約書の見直し
 スケジュールを組む

 

同一労働同一賃金、集団指導を強化 厚労省が自主点検票を配布

 

パート・有期社員の基本給「正社員の6割未満」に行政の目が厳しくなっています

 厚生労働省は、パートタイム・有期雇用労働者と正社員との不合理な待遇差を是正する同一労働同一賃金の遵守徹底に向けて、令和4年12月から取り組みを進めている。令和7年7月には運用変更にかかる通知を発出し、同年9月からは労働基準監督署や都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)、職業安定部が開催する説明会において、企業への集団指導を強化している。説明会では「チェック方式の自主点検票」が配布されており、パート・有期労働者の基本給が正社員の6割未満であるかどうかを確認する項目が含まれている。
出典:労働新聞社

 

 同一労働同一賃金というと大企業の話だと捉えている経営者も少なくありませんが、パート・有期社員を一人でも雇用していれば、企業規模を問わずすべての企業が対象です。特に中小企業では、正社員とパート社員の基本給を「なんとなくの相場感」で決めているケースが多く、その差の根拠が社内資料として整理されていないことが少なくありません。今回の自主点検票は、基本給が正社員の6割未満かどうかを明確にチェックする内容であり、これまで感覚的に運用してきた賃金差について、行政から具体的な基準に沿った説明を求められる場面が増えることを意味します。見落としやすいのは、待遇差そのものより「なぜその差があるのか」を説明できる資料が社内に存在するかという点です。職務内容や責任の範囲、異動の有無といった待遇差の合理的理由を、書面で整理しておくことが今後の実務対応の出発点になります。

【企業の対応アクション】
・パート・有期社員と正社員の基本給水準を一覧化し、6割未満に該当していないか確認する
・待遇差がある場合は、職務内容・責任範囲・異動の有無など合理的理由を書面で整理する
・就業規則・賃金規程における待遇差の説明根拠を最新の内容に更新する
・所轄の労働基準監督署・労働局が実施する説明会や自主点検票の配布状況を確認する

 

AI導入で残業が減らない理由―経済財政白書が示した効率化の落とし穴

 

AIを入れれば楽になる、その期待は本当に正しいのでしょうか。

 内閣府がまとめた令和8年度の経済財政白書は、企業のAI活用頻度が高いほど、従業員の残業時間が長くなる傾向があると指摘しました。AIによる業務効率化が、労働負荷の軽減に十分つながっていない実態が浮き彫りになっています。白書が引用したパーソル総合研究所の調査によると、AIの活用によって対象業務の作業時間は平均16.7%減少している一方、実際に業務時間を短縮できたと実感している人はわずか25.4%にとどまりました。さらに、週4日以上AIを利用する人は、利用しない人に比べて週当たりの残業時間が長い傾向にあることも分かりました。白書は、削減できた時間が新たな業務に回されていることや、AI導入に伴い業務そのものが複雑化している可能性を要因として挙げ、労働負荷の軽減は「道半ば」であると結論づけています。

出典:日本経済新聞

 「AIを入れれば残業が減る」という期待だけで導入を進めると、かえって労務リスクを高めかねません。今回のデータが示すのは、効率化で生まれた時間が自動的に休息に回るわけではなく、多くの場合は別の業務に吸収されてしまうという現実です。経営者が見落としがちなのは、AI導入によって「一人当たりの処理量」が増え、結果として業務量そのものが膨張してしまう点です。効率化した分だけ仕事を積み増せば、残業時間は減らず、むしろ従業員は「楽になったはずなのに忙しい」という感覚のズレを抱えることになります。中小企業では、AI導入の判断が現場任せになりやすく、業務量の再設計が後回しにされがちです。ツールを入れることと、働き方を見直すことは別の取り組みだと捉える必要があります。導入効果を「時間削減」で終わらせず、削減した時間をどう配分するかまで経営者が関与することが、実効性のある労働時間管理につながります。

【企業の対応アクション】
・AIツール導入前後で対象業務の実労働時間を記録し、効果を定量的に確認する
・削減できた時間を新規業務に自動的に充当せず、配分方針を経営者が決定する
・AI導入担当者・現場責任者に対し、残業時間の推移を定期的に報告させる
・「時間削減=残業削減」ではないことを管理職に周知し、労働時間管理を徹底する
・AI活用度の高い部署・従業員の残業時間を優先的にモニタリングする

訪問業務の労働時間、日報だけで管理していませんか

事業場外みなし制の適用要件を判例で確認

 

「外回りの部下の残業代、うちは大丈夫」と思っている社長ほど危ない理由

 

 福岡高等裁判所は令和7年8月28日、協同組合における技能実習生指導員の未払い割増賃金請求訴訟で、事業場外労働のみなし労働時間制の適用を巡る判断を示しました。原告は熊本県内および九州各地の実習実施企業への訪問・巡回指導を担当していた指導員です。争点は、労働基準法38条の2第1項が定める「労働時間を算定し難いとき」に該当するかどうかでした。一審はみなし制の適用を否定していましたが、福岡高裁は原審の判断を破棄し、差し戻しました。判決は、指導員が自らスケジュールを管理し、会社から具体的な指示を受けていなかった点を重視し、会社が

勤務状況を把握することは容易でなかったと認定しています。

出典:労働新聞社

 この判決で見落とされがちなのは、みなし制の適用可否が「訪問業務かどうか」ではなく「会社が勤務状況を把握できたかどうか」で判断されるという点です。営業職や訪問系職種を抱える中小企業の多くは、日報や訪問記録の提出をもって管理していると考えがちですが、日報の提出だけでは労働時間を把握したことにはなりません。GPS付き社用スマホでの位置管理や、訪問先への電話確認、業務指示のやり取りが常態化している場合は、逆にみなし制の適用が否定されるリスクが高まります。人材が限られる中小企業ほど、営業や訪問担当者の管理を本人任せにしがちですが、それは労務リスクの放置と紙一重です。組織を回すためには、社長自身が労働時間管理の仕組みを把握し、みなし制に頼るのか実労働時間を正確に把握する体制に切り替えるのかを、経営判断として明確にする必要があります。

【企業の対応アクション】
・訪問、外回り業務を行う従業員の勤怠管理方法を確認する
・日報のみで労働時間を把握していないか点検する
・GPSや位置情報付きツールの運用実態を見直す
・事業場外みなし制の対象者に具体的指示を出していないか確認する
・就業規則、労使協定のみなし制規定を社労士と再点検する

うちの人事は総務と兼務」は6割が当たり前 

人事白書2026に見る中小企業の労務管理リスク

 

人事担当者が総務や経理と兼務している――それ自体は普通のことです。

問題は、その体制が労務管理の「後回し」を常態化させていないかどうかです。

 

 

 「日本の人事部」が実施した人事白書2026の調査で、企業における人事部門の専任化状況が明らかになった。全体では「全員が人事専任」39.4%、「大半が他業務と

兼務」28.0%、「大半が専任だが一部兼務」24.8%、「半数程度が兼務」7.3%という

内訳である。企業規模別に見ると差は顕著で、従業員1〜100人の企業では「大半

が他業務との兼務である」が59.6%と過半数を占める。一方、5001人以上の企業で

は「大半が人事専任だが一部兼務者がいる」50.7%、「全員が人事専任」46.4%とな

り、501〜1000人・1001〜5000人規模でも「全員が専任」がそれぞれ53.1%、60.6%に達している。企業規模が大きいほど人事の専任化が進む傾向が、データで裏付

けられた形だ。

出典:日本の人事部

  顧問先を持つ立場から見ると、この59.6%という数字は驚くよりも「やはり」という実感に近いものです。人事担当者が総務や経理、時には現場業務と兼務しているケースは珍しくなく、それ自体が悪いわけではありません。問題は、兼務体制が労務管理の「後回し」を常態化させてしまうリスクです。就業規則の改定、36協定の更新、ハラスメント相談窓口の運用――どれも片手間でこなせる業務ではありませんが、専任者がいない会社では「時間ができたら対応する」項目になりがちです。実際、「担当者が異動して以来、労務関連の対応が止まっていた」というケースは珍しくありません。兼務がダメなのではなく、兼務している人事機能をどう補うかという発想の転換が必要です。社労士など外部専門家との継続的な連携は、専任者を置けない中小企業にとって、まさにこの「補完」の役割を果たします。

【企業の対応アクション】
・自社の人事担当者が兼務している業務範囲を棚卸しし、労務管理に割ける時間を可視化する
・就業規則・36協定・安全衛生関連など期限管理が必要な業務をリスト化し、担当者不在時の  
 代行ルールを決めておく
・兼務担当者が退職・異動する際の引き継ぎマニュアルを整備する
・社労士など外部専門家との定例確認の機会を設け、兼務体制の「抜け漏れ」を定期的に
 チェックする
・ハラスメント相談窓口など法定対応が必要な業務は、兼務者任せにせず責任の所在を
 明確にする

「フルリモート採用」は今のルールで守られているか 
GMO在宅勤務禁止方針から考える労働条件通知書の重要性

 

在宅前提で採用した社員に「明日から出社」と言えますか。

答えは求人票と一枚の書面に書かれています。リスクとは

 

 GMOインターネットグループの代表がSNS上で在宅勤務の原則禁止・出社回帰の方針を発表したことをきっかけに、フルリモート前提で入社した社員が出社命令を拒否できるかが論点となっている。弁護士の見解によれば、この問題は就業規則の不利益変更の枠組みではなく、個々の労働契約において勤務場所がどのように合意

されているかが焦点となる。判断の鍵は、入社時に交付される労働条件通知書の

「就業の場所」欄と「変更の範囲」欄の記載内容である。自宅のみに限定する記

載がなく、会社指定の事業所等への異動可能性が明記されていれば、出社命令は

通常の業務命令として扱われ、原則として有効と判断される可能性が高い。一方、

求人票に「フルリモート」と明記し、採用面接でもそれを前提として説明してい

た場合には、書面上の記載がなくても黙示の合意が成立していたと認定される余

地がある。その際は応募時のメールや面談記録が重要な証拠となり得る。会社側

が勤務場所の限定合意が存在しないことを示せなければ、出社命令やそれに基づ

く処分は無効となる可能性がある。

出典:Yahoo!ニュース

  この論点は大企業だけの話ではありません。むしろ人手不足の中で「フルリモート可」を採用の武器にしてきた中小企業ほど、直撃するテーマです。経営者が見落としがちなのは、求人票やスカウトメールで「フルリモート歓迎」と謳った時点で、労働条件通知書に何も書かなくても口約束に近い合意が成立し得るという点です。反対に、労働条件通知書の「変更の範囲」欄を空欄のまま交付している企業も少なくありませんが、この欄の記載が曖昧だと、将来出社を求めたいときにも、逆に社員側から「聞いていない」と主張されたときにも、会社の立場を守る根拠が弱くなります。現場で起こり得るのは、経営判断として出社回帰を決めた瞬間に、優秀なリモート人材から一斉に不満や退職の申し出が上がるという事態です。方針転換そのものは経営の自由ですが、その前提となる採用時の合意内容を書面で残しているかどうかで、トラブルになるかどうかが大きく変わります。

【企業の対応アクション】
・現在交付している労働条件通知書の「就業の場所」「変更の範囲」欄の
 記載内容を全社員分点検する
・フルリモート採用を行う場合は、求人票・面接・通知書の記載を一致させ、
 将来の出社可能性の有無を明文化する
・在宅勤務からの出社回帰を検討する場合は、対象者の労働契約内容を個別に確認してから
 方針を発表する
・採用時のやり取り(求人票・応募メール・面接記録)を、後日の紛争に備えて保存しておく
・在宅勤務規程やテレワーク規程がある場合は、就業規則・労働条件通知書との整合性を
 確認する

スキマバイトの契約成立タイミングに要注意

責任の所在が曖昧な労務トラブルの実態

 

便利な人材確保の裏に潜む、経営者が見落としがちな法的リスクとは

 

 スキマバイト仲介事業者でつくる「スポットワーク協会」(東京)は、適切な労務管理に向けたリーフレットを公表する方針を示した。背景には、発達障害の特性を持つ30代男性がスキマバイトを繰り返す中で、直前キャンセルや不当な扱いを受けるなど複数のトラブルに直面している実態がある。「指示が聞こえていない」といった理由で現場から早退させられても、休業手当が支払われないケースが報告されている。厚生労働省は一般論として、労働契約は「応募完了時点」で成立すると判断しており、職場到着後にキャンセルされた場合でも休業手当の支払い義務が生じ得るとの見解を示している。一方で仲介事業者は、求職者個々の特性を一律に把握・管理していないと説明しており、責任の所在が仲介事業者と求人企業のどちらにあるか明確でないまま、働き手が不利益を被るケースがあるという。

出典:Yahoo!ニュース(Yahoo! JAPAN)

  スキマバイトは人手不足解消の即効策として中小企業にも急速に広がっていますが、今回の事例は「仲介プラットフォームを使えば責任は先方が負う」という経営者の思い込みが崩れかねない点を示しています。厚労省見解のとおり労働契約は応募完了時点で成立するため、企業側の都合で当日キャンセルすれば休業手当の支払い義務が生じる可能性があります。これは通常のシフト労働者と同じ扱いであり、スキマバイトだから労務管理が不要というわけではありません。特に見落とされがちなのが、現場に急に配置された働き手への指示の伝え方や記録の残し方です。口頭指示だけで済ませていると、後日「指示が伝わっていなかった」という水掛け論に発展し、経営者自身が対応に追われる事態になりかねません。仲介事業者との契約内容を確認しないまま導入している企業ほど、トラブル時に責任の所在で揉め、本来注力すべき経営判断に割く時間を奪われるリスクが高いといえます。

【企業の対応アクション】
・スキマバイト活用時の当日キャンセル基準と休業手当の支払い基準を社内規定として
 明文化する
・仲介事業者との契約書で労務トラブル発生時の責任分担条項を確認する
・現場責任者向けに指示内容を記録・共有する統一ルールを作成する
・特性配慮が必要な働き手を想定した対応マニュアルを整備する
・スポットワーク協会が公表するリーフレットの内容を確認し自社運用に反映する

退職代行の急増が映す、中小企業の労務管理の落とし穴

 

「退職代行から突然の連絡」その背景にある労務管理の不備

経営者は見過ごしていないでしょうか。

 

 退職代行サービスを利用した退職が急速に広がっている。2024年1月以降の調査では、企業全体の8.7%が退職代行による退職を経験しており、大企業では約2割(15.7%)に達するという。上場準備企業においては、この傾向がIPO審査上のリスクとして注目され始めている。具体的には、即時退職による業務の引き継ぎ不能、有給休暇申請を巡る労務管理の不備の顕在化、ハラスメントや過重労働の疑念という3点が指摘されている。退職代行の利用が多い職場は、ガバナンス・労務管理・人材定着の観点で問題がある職場として評価されるリスクがあるとされ、企業側には退職手続きの標準化や有給管理の正確化、業務の属人化解消、職場環境の改善が求められている。

出典:Manegy「退職代行が来た日、IPOに影響はあるのか?――大企業の約

2割が経験する時代」

出典:Yahoo!ニュース

  この話はIPO準備企業に限った話ではありません。退職代行は非上場の中小企業でも確実に増えています。経営者が見落としがちなのは、退職代行を「一部の困った社員の話」と捉えてしまう点です。実際には、日頃から本人が直接言い出しにくい職場の空気こそが、退職代行という手段を選ばせている根本要因であるケースが少なくありません。現場では、退職代行からの連絡を受けて初めて有給休暇の残日数管理が曖昧だったことに気づいたり、引き継ぎ資料が本人の頭の中にしかなく業務が止まったりする事例が典型的です。実務対応としては、退職代行経由の申し出であっても労働者の権利であることを前提に、まずは有給休暇の消化ルールと引き継ぎ手順を平時から明文化しておくことが有効です。あわせて、退職の申し出が出にくい職場になっていないか、1on1や面談の機会を通じて定期的に確認する体制づくりも重要になります。

【企業の対応アクション】
・有給休暇の残日数管理をルール化し、退職時に慌てないようにする
・業務マニュアル・引き継ぎ資料を属人化させず日頃から整備しておく
・退職代行からの連絡受付フローと社内対応手順をあらかじめ決めておく
・上司と部下の定期面談を設け、退職の兆候を早期に把握できる体制を作る
・ハラスメントや過重労働の相談窓口を整備し、機能しているか定期点検する

 

「業務委託だから残業代なし」は通用しない 

契約書の名称だけでは労務管理は守れない

 

その業務委託契約、働き方の実態次第では未払い残業代を

請求されるかもしれません

 

 占いサイトを運営する企業が、鑑定士として働いていた女性との契約を巡り訴訟

となりました。女性は約2年3か月にわたり、サイト登録会員への占い鑑定結果の提供業務を担当していました。契約は「業務委託契約書」を交わしていた時期と、契約書のない時期が混在しており、月額30万円とインセンティブの支払いが規定されていました。裁判所は、契約の名称が業務委託であっても、実際の働き方から見て実質的には労働契約であると判断しました。その結果、会社側に約370万円の未払い残業代の支払いを命じる判決が下されています。

出典:Yahoo!ニュース

  この事例で見落とされがちなのは、契約書の表題を「業務委託契約書」にすれば残業代の支払い義務を免れられるという誤解です。労働者性の判断は、指揮命令の有無や報酬の労務対償性、時間的場所的拘束の程度など、実態に基づいて行われます。契約書の文言だけを整えても、実際の働かせ方が労働契約と変わらなければ、後から多額の未払い賃金を請求されるリスクは消えません。特に人手不足を背景に、フリーランスや個人事業主への業務委託を増やしている中小企業ほどこの落とし穴にはまりやすい状況です。委託先に対して業務の進め方を細かく指示したり、勤務時間や勤務場所を事実上拘束したりしていないか、現在の契約実態を一度棚卸しして確認することをお勧めします。

【企業の対応アクション】
・現在締結している業務委託契約の実態を洗い出し、指揮命令の有無を確認する
・報酬体系が固定給的で労働の対価となっていないか見直す
・勤務時間・勤務場所を過度に拘束する運用がないか点検する
・契約書のひな形を専門家に確認してもらい、実態と齟齬がないか整理する
・労働者性が疑われる契約については、雇用契約への切り替えを検討する

「働き方改革」が逆回転? 裁量労働制拡大の動きに中小企業が今備えるべきこと

 

残業規制の岩盤に風穴 高市政権が掲げる労働時間規制緩和の行方

 

 高市早苗首相は成長戦略の柱として、労働時間規制の緩和を掲げています。具体的には、実際の労働時間にかかわらず一定時間働いたとみなす裁量労働制の適用拡大、繁忙期と閑散期で労働時間を調整する変形労働時間制の拡充、そして時間外労働を月45時間以内に抑えるよう求めてきた労働基準監督署の一律指導の見直しが検討されています。第2次安倍政権が進めた「働き方改革」は長時間労働の是正が柱でしたが、今回の方針はその流れと逆行する内容です。連合会長は労働者の健康を守る立場から強く反対しており、厚生労働省も労働者の健康確保とのバランスを重視する姿勢を示しています。具体策は労働政策審議会での議論に持ち越され、対立が続いている状況です。

出典:東京新聞

  経営者にとって見落としやすいのは、規制緩和は「残業させ放題」を意味するわけではないという点です。裁量労働制は対象業務や導入手続きが労働基準法で厳格に定められており、対象外の業務に適用すれば違法となります。変形労働時間制も就業規則への明記や労使協定の締結が前提であり、制度を正しく設計しなければ労働基準監督署の是正勧告や未払い残業代のリスクにつながります。中小企業では「国が緩和するなら残業管理を緩めてよい」という誤解が生まれやすい局面ですが、実際には制度導入のハードルは今も高いままです。今回の議論は労働政策審議会で数年単位の調整が見込まれるため、拙速に自社の運用を変える必要はありません。むしろこの機会に、自社の労働時間管理が現行制度に照らして適正かどうかを点検し、将来の制度変更にも対応できる体制を整えておくことが得策です

【企業の対応アクション】

・現在の労働時間管理(36協定・変形労働時間制・裁量労働制)が労働基準法の要件を
 満たしているか確認する
・「規制緩和」の報道を理由に残業管理を緩めず、現行法令に基づいた運用を継続する
・裁量労働制や変形労働時間制の導入を検討する場合は、対象業務の適合性を専門家に
 確認してから進める
・労働政策審議会の議論の進捗を定期的に確認し、制度変更時に速やかに対応できる体制を
 整える
・管理職に対して、現行の残業規制と将来の制度変更の違いを正しく説明し、現場の誤解を
 防ぐ

「労働時間規制緩和」に7割賛成でも要注意 中小企業が今点検すべきこと

 

 規制緩和は「残業代削減」ではない 7割が歓迎する制度変更に潜む落とし穴

 

  政府が「労働時間規制緩和」の検討を進める中、人事・採用担当者向け情報サイト「人事のミカタ」を運営するエン・ジャパン株式会社が、利用企業の人事・採用担当者317名を対象に意識調査を実施した。
 
調査期間は2025年12月9日から2026年1月25日で、インターネットアンケートによるもの。労働時間規制緩和について「良いと思う」と回答した企業は68%、「良いと思わない」は26%だった。肯定理由としては「柔軟性の向上」「意欲ある社員の収入・キャリアアップ」が挙げられた。一方、否定理由としては「健康被害」「長時間労働を評価する風土への逆戻り」への懸念が挙げられた。仮に規制緩和が実施された場合、自社に「支障が出る」と回答した企業は27%にのぼり、想定される影響としては「長時間労働の常態化」(52%)、「人件費増大」(50%)が上位を占めた。また、現在の月間残業時間については67%が「1~20時間」と回答しており、うち40%が減少傾向にあると答えている。

出典:エン・ジャパン株式会社「人事のミカタ」

  今回の調査で見逃せないのは、「良いと思う」が7割に達する一方で、実際に緩和が実施された場合には「支障が出る」と答えた企業も3割近くに上っている点である。総論では歓迎しつつ、各論では懸念が残るという構図は、労働時間規制緩和が制度設計次第で経営にプラスにもマイナスにも働き得ることを示している。中小企業の経営者が見落としがちなのは、規制緩和は「選択肢が増える」制度であって、残業代や人件費の削減を約束するものではないという点だ。むしろ調査結果が示す通り、緩和後に長時間労働が常態化すれば、割増賃金や社会保険料の負担はかえって増加しかねない。現場では、頑張って長く働く社員ほど評価される風土が固定化すると、休みにくい職場になり、若手や中堅社員の離職リスクが高まる懸念もある。実務対応としては、規制緩和は現時点では検討段階であり確定した制度変更ではないため、今後の動向を注視しつつ、自社の36協定の運用実態やみなし残業の運用状況を今のうちに点検しておくことが重要である。

【企業の対応アクション】
・36協定の届出内容と実際の残業実態に乖離がないか、今月中に確認する
・固定残業代(みなし残業)を採用している場合、実際の時間外労働が想定時間を
 超えていないか点検する
・繁忙期など長時間労働が生じやすい部署を洗い出し、業務分散や増員の要否を検討する
・「長く働く人ほど評価される」風土がないか管理職層にヒアリングし、評価基準を見直す
・労働時間規制緩和の制度化動向を厚生労働省の発表等で継続的に確認し、
 就業規則改定の要否を判断する

2026年春季賃上げ最終集計が出た。中小企業経営者は何を読み取るべきか

 

   「うちには関係ない」そう思った経営者が最初に失う社員は、
       会社を最もよく知る中核人材です。

 

  東京都産業労働局は令和8年6月25日、2026年春季賃上げの最終集計結果を公表した。集計対象は都内1,000労組のうち前年比較が可能な383組合で、平均妥結額は17,573円、賃上げ率は4.82%となった。前年実績(17,598円)からほぼ横ばいで、高水準が2年続いた形だ。平均賃金ベースは364,247円(平均年齢41.0歳)。業種別の格差は大きく、情報制作(出版等)が+22.09%、建設業が+17.34%と高い伸びを記録した一方、宿泊・飲食業は-32.58%、窯業は-37.95%と大幅な落ち込みを示している。連合(第6回・6月1日時点)では全体5.02%、300人未満の中小企業では4.70%と目標の6%以上には届かず、経団連集計の大手第1回(5.46%・19,964円・過去最高)との規模間格差が続いている。

   出典:東京都産業労働局「令和8年春季賃上げ状況調査」

  まず、このデータの射程を正直にお伝えします。今回の集計は労働組合を持つ企業が中心であり、組合のない中小企業の実態がそのまま反映されているわけではありません。しかし、求職者も在職中の社員も、転職情報サイトや業界メディアを通じてこの平均値を横断比較しています。「組合がないから関係ない」と判断する前に、自社の賃金水準がこの相場感の中でどこに位置するかを把握しておくことが大切です。業種別格差が示すとおり、賃上げの状況は業種によって大きく異なります。「市場全体の平均と比べてどうか」ではなく、「自社が属する業種・規模の水準と比べてどうか」が現実的な判断の起点になります。「賃上げしないリスク」の本質は、派手な形では表れません。賃金水準の根拠が社員に伝わっていない場合、評価されていないと感じた中核人材が黙って転職活動を始めます。組織の業務を最もよく理解している人材が離れると、引継ぎや採用コスト以上の損失が経営に響きます。
  今求められる問いは「いくら上げるか」より「賃金設計は合理的か、社員に説明できるか」です。賃上げ余力が限られているなら、評価基準の整備と透明化が実務的な出口になります。等級ごとの期待役割と賃金の対応関係を明文化し、社員に示せる状態をつくることが、定着と信頼の土台です。

   【企業の対応アクション】
   ・自社の業種・規模に対応する公表データ(東京都・厚生労働省)と現在の賃金水準を照合
  し、相場感を数字で把握する
 ・賃金テーブルを点検し、「どの条件を満たせばいくらになるか」を社員が理解できる状態
  かを確認する
 ・等級ごとの期待役割と賃金の対応関係を文書化し、採用・入社時の説明に組み込む
 ・賃上げ促進税制(2026年度・最大35%税額控除)の適用可否を顧問税理士と確認し、投資
  判断の材料にする
 ・年1〜2回の個別面談で処遇への認識を確認し、転職活動が始まる前に対話の機会をつくる

AIに人事判断を任せた結果、責任を負うのは誰か

 

   「AIが判断したから」は通用しません。

  採用・評価にAIを使う前に知っておきたい法的責任の話。

 

   採用選考や人事評価にAIを活用する企業が増える中、AIによる人事的判断を

  直接規制する法律は現時点で存在しないことが、弁護士の解説で示されました。

  そのため既存の労働法や個人情報保護法の枠組みで対応する必要があります。

  論点として、過去の採用データにあった偏りをAIが学習し、性別などによる

  差別的な判断結果を生み出す可能性が指摘されています。また、AIを開発した

  ベンダーではなく、その判断を実際の人事に利用した企業側が法的責任を負う

  という点が強調されています。採用や配置転換でAIを使う場合は、判断の

  根拠となる記録を保持し、説明責任を果たせる体制を整える必要があるとして

  います。今後はプラットフォームワーカーなど、AIアルゴリズムが実質的に

  労務管理を行う領域での労働者性の問題も課題になると見込まれています。

  出典:マイナビキャリアリサーチLab

 中小企業でも採用管理システムや適性検査ツールにAI機能が搭載されているケースが増えていますが、「ツールが出した結果だから」と判断の理由を説明できない状態は、最も見落とされやすいリスクです。書類選考でAIのスコアだけを根拠に不採用にした場合、後から応募者に説明を求められても答えられず、トラブルに発展する可能性があります。重要なのは、AIの提示した結果を最終決定とせず、必ず人が確認し判断した経緯を記録しておくことです。採用基準や評価基準そのものに過去の偏った傾向が反映されていないかも、定期的に見直す必要があります。AIは判断を助ける道具であり、責任を引き受けてくれる存在ではないという前提を、経営者自身が持っておくことが今後の組織運営において欠かせません。

  【企業の対応アクション】
  ・採用・評価でAIツールを使う場合は最終判断を人が行う運用を明文化する
  ・AIが提示した判断根拠を記録し一定期間保存する体制を整える
  ・採用基準や評価項目に過去データの偏りが反映されていないか定期確認する
  ・応募者・従業員からの説明要求に対応できる窓口と手順を用意する
  ・AIツール導入前に個人情報保護法上の取扱いを社労士・弁護士に確認する

  ・従業員から待遇の説明を求められた場合の対応手順を整備する

2026年10月施行|パートタイム・有期雇用のルール改正、

  中小企業が今すぐ確認すべきこと

 

  「うちのパートは特別だから」では通らない
 10月施行の改正で
賃金体系の見直しが義務になります。

 

   2026年10月1日より、パートタイム労働者および有期雇用労働者に関するルールが改正されます。今回の改正は「同一労働同一賃金」の実効性をさらに高めることを目的としており、正社員との不合理な待遇差の解消がより明確な基準で求められるようになります。対象となるのは、時給制・日給制のパートタイム労働者だけでなく、契約社員・嘱託社員など有期雇用契約で働くすべての労働者です。賃金(基本給・各種手当)のほか、賞与・退職金・教育訓練・福利厚生施設の利用なども待遇差の禁止対象として整理されており、これまで曖昧にされてきた範囲が明確化されます。また、労働者が事業主に待遇の説明を求める権利(説明義務)も強化される見込みです。厚生労働省は改正内容の周知を進めており、中小企業を含むすべての事業主が対応を求められます。

  出典:ツギノジダイ(朝日新聞)

 うちはパートが多いから関係ない」という声を現場でよく耳にしますが、今回の改正はむしろパートや有期雇用を多く活用している中小企業こそ影響が大きい内容です。同一労働同一賃金は2021年4月に中小企業にも適用されましたが、実態として「正社員と同じ仕事をしているのに、なぜ待遇差があるのか」を合理的に説明できない企業が多く残っています。今回の改正ではその説明責任がさらに厳格化される見通しです。
  特に注意が必要なのは、基本給だけでなく「各種手当の扱い」です。例えば通勤手当・皆勤手当・精勤手当などを正社員にしか支給していない場合、その合理的な理由を説明できなければ是正を求められる可能性があります。賞与についても「パートだから支給しない」という慣行のみを根拠にすることは認められない判例が積み重なっており、実態の職務内容と責任範囲の整理が急務です。施行まで残り約3か月。「気づいたら間に合わなかった」という事態を避けるためにも、今月中に自社の賃金体系・手当の支給基準を見直すことをお勧めします。

 

【企業の対応アクション】

 ・正社員とパート・有期雇用の職務内容・責任・異動範囲を書面で整理する
・各種手当(通勤・皆勤・精勤・家族手当など)の支給対象と基準を確認する
  ・賞与・退職金のパート・有期雇用への適用ルールを明文化する
  ・待遇差がある場合は「合理的な理由」を文書で準備しておく
  ・就業規則・賃金規程を改正内容に合わせて見直す
  ・従業員から待遇の説明を求められた場合の対応手順を整備する

 管理職の「うっかり発言」が招く経営リスク ハラスメント対策を経営課題として整備する

 

 ハラスメントは「人事の問題」ではなく、上場審査・訴訟・信用失墜に直結する「経営の問題」です。
 

  ハラスメント防止措置は2020年に大企業、2022年6月より中小企業にも義務化されました。義務化から4年が経過した現在、上場審査の現場では「相談窓口の規程があるか」よりも「実際に機能しているか」という実態が審査の焦点となっています。管理職による不用意な発言が記録・報告されず放置された場合、ガバナンス上の問題として上場審査が停止するリスクが指摘されています。また、訴訟や社外への情報流出によるレピュテーション損失も深刻な経営リスクです。ハラスメント対応の実務では、①財務リスクの評価、②相談体制の構築、③管理職研修の実施、

④経営会議への定期報告、⑤企業文化の整備という5つの柱が求められています。

出典:Manegy(マネジー)

 「多くの中小企業では、就業規則にハラスメント防止規程を設けているものの、「形だけの相談窓口」になっているケースが少なくありません。相談窓口の担当者が総務や経理を兼務しており、実際に相談が持ち込まれても記録も対応記録も残っていない、という実態は珍しくありません。経営者が見落としやすいのは、「管理職の発言」が問題化するリスクです。日常の会話の中で管理職が放った一言が後に訴訟に発展し、SNSで拡散するケースが増えています。こうした事案は「管理職の個人的な問題」ではなく、企業として管理職を教育・監督する義務を果たしていなかった問題として経営者責任が問われます。上場を目指す企業だけでなく、顧客・取引先・採用候補者から見られる会社としての信頼性という観点でも、ハラスメント対策の実質的な整備は経営上の優先課題です。今後は「規程があるか」ではなく「機能している証拠があるか」を問われる時代であることを認識しておく必要があります。

 

【企業の対応アクション】

・就業規則のハラスメント規程を見直し、相談窓口担当者と対応フローを明文化する

・相談受付・対応・結果の記録を必ず文書で保存し、3年以上の保管体制を整える

・管理職向けハラスメント研修を年1回以上実施し、受講記録を保存する

・ハラスメント相談件数・対応状況を四半期ごとに経営会議に報告する仕組みを設ける

・外部の相談窓口(社労士・EAP機関等)を設け、社内相談しにくい環境を補完する

賃上げできない会社に足りない「2つの経営インフラ」

 

 人事評価制度と経営計画がない中小企業の賃上げ実施率は38%――

  制度の有無が、賃上げを「できる会社」と「できない会社」に分けている。

 

  本人事経営研究室が中小企業を対象に実施した調査によると、人事評価制度と経営計画の両方を運用している企業の賃上げ実施率は73.0%であるのに対し、どちらも運用していない企業では38.0%にとどまることが明らかになりました。その差は35ポイントに上ります。両制度がない企業では従業員の給与に対する納得度も低く、72.0%が不満を示しており、継続勤務を希望する割合は41.0%にまで低下しています。さらに、制度がない企業を退職した従業員の61.0%が、離職理由として給与への不満を挙げており、経営の仕組みの欠如が人材流出の連鎖を生み出していることが示されています。
 

  出典:HRzine

 「賃上げをしたいが原資がない」と話す経営者は少なくありません。しかしこの調査が示しているのは、資金の問題ではなく「仕組み」の問題です。人事評価制度と経営計画のない企業では、そもそも「誰に・どのくらい・なぜ賃上げするか」を決める根拠がありません。賃上げの意思決定ができないまま時間だけが過ぎていきます。人事評価制度は単なる査定ツールではありません。「この会社では、頑張れば正当に評価される」という社員への約束です。基準がなければ、貢献度の高い社員ほど「自分は見えていない」と感じ、不満が蓄積します。
 経営計画も同様です。3年後・5年後の方向性が示されなければ、社員は賃金の先行きを想像できず、漠然とした不安から離職を選びます。35ポイントの差は「お金があるかどうか」ではなく、「経営の仕組みがあるかどうか」の差と見るべきです。制度整備を後回しにしている間にも、優秀な社員は給与水準の明確な企業へと移っていきます。賃上げの持続性・採用競争力・社員定着の全てが、この2つのインフラの有無にかかっています。

  【企業の対応アクション】

  ・人事評価制度の有無を確認し、なければ簡易版(3段階評価など)から導入を検討する
  ・単年度の経営計画に「賃金方針(賃上げ率の目安・原資の根拠)」を明記し社員に共有する
  ・賃上げ原資の確保に向けた生産性向上・価格転嫁の取り組みを計画に組み込む
  ・制度設計の優先順位と進め方は、社会保険労務士・経営コンサルタントに相談する

「ジョブ型雇用」を導入した企業の4割が失敗する理由 

 

 制度を変えただけでは何も変わらない。変革のカギは経営者自身の「覚悟」

 

  日本型雇用の代替として注目される「ジョブ型雇用」だが、導入済みまたは検討中の企業が5割を超えた(ジェイエイシーリクルートメント・2025年調査)一方、

  導入しても十分に機能していない企業が4割を占めることが明らかになった。

  三井住友海上火災保険は2025年に「スキル型人事制度」を導入。約800種類のスキルを定義し、社員が4年に1度は社内公募に応募して新たな職務に挑戦することを義務付けた。取締役の井口直紀氏は「欧米流のジョブ型を単純に移植するのではなく日本型雇用の利点も取り入れた独自の仕組みを設計することが重要だ」と語る。学習院大学の守島基博教授は「従来のメンバーシップ型の土台を残したまま、うわべだけジョブ型を取り入れることが失敗の一因」と指摘する。「社員のキャリア自律を掲げながら、会社都合で動かせる人材も欲しいというのが本音の企業もある」と問題の根深さを示した。武蔵大学の神林龍教授は「日本企業は自社の戦略的な方向性を現場に落とし込むことができていない」として、「経営者自身が雇用慣行の変革者にならなければいけない。それが本当のリーダーシップだ」と訴えた。

  出典:日本経済新聞

 ジョブ型」という言葉だけが独り歩きしている現場を、私は顧問先で何度も目にしてきました。職務記述書を整備し「うちもジョブ型にした」と言いながら、実際には会社都合の配置転換が続き、スキルと仕事の内容がまったく連動していない。この記事が示す「4割が機能していない」という数字は決して大企業だけの話ではありません。
  中小企業にとって深刻なのは、大企業と違って専任の人事部門が存在しないことです。社長が制度の設計者であり、運用者であり、評価の最終判断者でもある。それゆえ「制度を変えた」だけでは何も変わらず、社長自身が「誰に・何を・どう任せるか」を言語化し、評価に反映させる覚悟がなければ、制度はすぐに形骸化します。神林教授の言葉が端的に本質を突いています。「経営者自身が変革者にならなければいけない」。人事制度の機能不全は、人事部の問題ではなく、経営者のリーダーシップの問題なのです。

  【企業の対応アクション】

  ・現行の人事評価基準を見直し、「仕事の内容・成果」で評価できているか確認する

  ・社員1名ずつに「担当職務の定義」を1〜2行で言語化してみる

  ・「この人にこの仕事を任せている理由」を社長自身が説明できるか問い直す

  ・中途採用(経験者採用)に門戸が開いているか、採用方針を点検する

  ・制度設計の前に「どんな人材・組織をつくりたいか」を経営方針として明文化する

厚生年金「週20時間の壁」は残る──社会保険料負担、中小企業は今から備えよ

 

  「106万円の壁」は消えても、もう一つの壁は残ります。パート採用を抱える経営者が今知っておくべき、社会保険のもう一つの論点。
 

  社会保険(厚生年金・健康保険)の適用拡大をめぐり、年収要件(いわゆる「106万円の壁」)の廃止が決まり、2026年10月から施行されます。これにより、これまで加入対象外だったパートタイム労働者が新たに社会保険に加入することになります。一方で、もう一つの加入要件である「週20時間以上の労働」については、見直しの議論が進んでいません。この要件が残ることで、労働者が社会保険加入を避けるために週20時間未満で働こうとする、いわゆる「時間の壁」問題は引き続き続きます。厚生労働省は適用拡大を段階的に進めてきましたが、「週20時間要件」の撤廃については使用者側・労働者側の双方に慎重論が根強く、政策論議は夏以降に持ち越された状態です。

 

  (出典:日本経済新聞)

 「106万円の壁がなくなるなら、もうパートの時間管理は気にしなくていい」と思っている経営者は少なくありま ん。しかし実際には、「週20時間以上」という要件が残る限り、この問題は終わりません。中小企業への影響として最も大きいのは、パートタイム労働者を多く抱える業種での人件費の増加です。週20時間を超えると社会保険加入が必要になり、事業主が負担する保険料は給与の約14〜15%が追加でかかります。これを意識するパート労働者は「週19時間台」での勤務を希望するケースが増え、シフトが組みにくくなるという矛盾が現場で生まれています。さらに将来的に「週20時間要件」も撤廃される可能性があります。その場合、全てのパートタイム社員が社会保険の加入対象になるため、現時点での人件費に加えて将来シナリオの試算もしておくことが、経営上の備えになります。「今は関係ない規模だから」と静観している経営者ほど、法改正が進んだときに対応が後手に回る傾向があります。

  【いますぐやるべきこと】

   ・現在のパート・アルバイトの週所定労働時間を一覧で把握する
  ・「週20時間前後」の労働者が何名いるか確認し、社会保険加入の影響を試算する
  ・「週20時間要件」が将来撤廃された場合の人件費増加額をシミュレーションしておく
  ・採用条件・シフト設計の見直しを、今の段階から検討する

同一労働同一賃金の考え方が無期契約社員にも拡大。

 

 雇用区分だけによる待遇差に警鐘。無期契約社員と正社員の賃金格差に高裁が違法判断    

 青森県の会社で働く無期契約のフルタイム労働者が、正社員との賃金格差は違法であるとして差額賃金の支払いを求めた訴訟で、仙台高裁は会社に対し賞与や家族手当など約193万円の支払いを命じました。パートタイム・有期雇用労働法は本来、有期雇用労働者と正社員との不合理な待遇差を禁止する法律ですが、高裁は同法施行後は「同一労働同一賃金」の考え方が社会一般のルールとして確立していると判断しました。その結果、雇用期間の定めがない契約社員についても、仕事内容や責任が正社員と同等であるにもかかわらず賞与や手当を支給しないことは不合理であるとして会社側の責任を認めました。判決は2026年4月に最高裁で確定しています。

YahooNewsの記事です

 今回の判決で注目すべき点は、有期雇用労働者だけではなく、無期契約社員についても同一労働同一賃金の考え方が適用され得ることを裁判所が明確にした点です。
 中小企業では「正社員ではないから賞与なし」「契約社員だから家族手当なし」という運用が現在でも少なくありません。しかし今後は雇用区分だけで待遇差を設けることが難しくなり、仕事内容、責任、配置転換の範囲など合理的な説明が求められる時代になります。
 特に人手不足の中で、長年勤務する契約社員や限定正社員が増えている企業では注意が必要です。賃金制度を放置すると、将来的に未払賃金や損害賠償のリスクにつながる可能性があります。
 経営者としては「正社員か非正社員か」ではなく、「どの役割を担っているか」という職務基準で処遇を整理することが重要になっています。

【今すぐやるべき対応】

・正社員と契約社員の賞与・手当の支給基準を確認する

・雇用区分ごとの役割や責任範囲を整理する

・待遇差がある場合の合理的理由を説明できる状態にする

・長期勤務している契約社員の処遇を点検する

・就業規則や賃金規程の見直しを検討する

生成AI導入率に大企業と中小企業で約2.7倍差 

                   AI活用格差が企業競争力を左右する時代    

 生成AIの導入は大企業・都市部で急速に進む一方、中小企業や地方企業では「必要性を感じない」との回答が多数を占めました。AI活用格差が、今後の企業競争力に直結する可能性があります。

 ラグザスが2026年4月に実施した調査によると、生成AIの導入・活用状況について、企業規模や地域による大きな格差が明らかになりました。
 
従業員5001人以上の大企業では、生成AIの導入率が64.7%に達し、34.9%の企業が「複数部署・業務で積極活用している」と回答しました。AIを単なる試験利用ではなく、実業務へ本格実装する動きが進んでいます。
 
一方、従業員1~300人規模の中小企業では導入率は23.7%に留まり、大企業との間で約2.7倍の差が生じています。また、中小企業の59.0%が「導入予定なし・必要性を感じない」と回答しており、導入検討段階にも至っていない企業が多い状況です。
 
地域別でも差が見られ、東京・大阪・名古屋など大都市圏では24.1%が「複数部署で積極活用」している一方、地方では6.0%に留まりました。地方企業では62.0%が「必要性を感じない」と回答しています。背景には、大企業ほどAI導入のための人材・予算・推進体制を整備しやすいことや、都市部では成功事例や支援ベンダーへアクセスしやすいことがあると分析されています。
 
記事では、今後は「AIを導入するか」ではなく、「どの業務へ適用し、現場へ定着させるか」が企業競争力を左右するテーマになると指摘しています。

TargetJapanの記事です

 中小企業では、「AIは大企業向け」「うちにはまだ早い」という声が多く聞かれます。しかし、今回の調査で重要なのは、“導入率の差”以上に、“業務改善速度の差”が広がり始めている点です。特に人手不足が深刻な中小企業では、本来AI活用の効果が大きい業務が多く存在します。例えば、求人票作成、議事録作成、マニュアル整備、顧客対応文面、社内FAQ作成などは、比較的導入しやすい分野です。
 一方で、「何に使えば良いか分からない」状態のまま放置すると、業務効率・採用力・教育体制の差として表面化していきます。特に今後は、AIを活用する企業ほど、少人数でも組織運営を回しやすくなる可能性があります。また、導入時に重要なのは「全社導入」ではなく、「現場で一つ成功体験を作ること」です。中小企業では、まずは社長や管理職が日常業務でAIを使い、小さな成功事例を作る方が定着しやすい傾向があります。
 さらに、AI活用が進むほど、「AIに任せる業務」と「人が担う業務」の切り分けも重要になります。単純作業を減らし、人にしかできない判断・顧客対応・育成へ時間を使える組織づくりが求められるでしょう。 

【今すぐやるべき対応】

・まずは議事録や文書作成など小規模業務からAI活用を始める
・社内でAI利用ルールを整備する
・個人情報や顧客情報の入力ルールを明確化する
・管理職向けにAI活用研修を実施する
・「AIで削減した時間を何に使うか」を整理する
・現場で成功事例を一つ作り社内共有する

働き方改革の限界が見え始めた   中小企業の2割が「事業運営に支障」と回答    

 日本商工会議所の調査で、中小企業の約2割が時間外労働の上限規制によって事業運営に制約が生じていると回答した。特に建設業・運輸業・宿泊飲食業では、人手不足と他律的業務対応が深刻化している。

 日本商工会議所・東京商工会議所は2026年5月、「中小企業の働き方改革に関する調査」を公表した。全国1,724社を対象に、時間外労働上限規制への対応状況や課題を調査したもの。調査によると、正社員1人当たりの平均時間外労働は「月20時間未満」が81.0%となり、多くの企業は制度上は上限規制内で運営している。
 
一方で、過去1年間で最も残業時間が多かった社員については、「単月45時間以上」が25.9%に達し、特定社員への業務集中が発生している実態が明らかとなった。
 
また、時間外労働上限規制により「事業運営への制約が生じている」と回答した企業は19.1%であり、特に運輸業35.7%、建設業28.7%、宿泊飲食業24.5%で影響が大きかった。制約内容としては、受注機会の喪失・営業時間短縮・納期遅延・外注費増加・管理職への負担集中などが挙げられている。
 
さらに、約44%の企業が「より長い労働時間を希望または承知する社員が1割以上いる」と回答しており、収入維持やスキル習得のために一定の残業ニーズも存在している。
 
企業からは、
・顧客都合で業務量調整が困難
・専門人材の代替ができない
・繁閑差に制度が追いつかない
などの声も多く挙がった。その結果、72.6%の企業が「変形労働時間制等の柔軟な制度拡充」を求めている。

日本商工会議所の記事です

 今回の調査は、「働き方改革が定着した」というより、「中小企業がギリギリで回している」現実を示しています。特に中小企業では・人が足りない・代わりがいない・急な仕事を断れないという状況が多く、“法律上は対応しているが、現場は苦しい”という状態になっています。

 特に建設業・運輸業・飲食業では・天候・顧客都合・納期・繁閑差など、自社努力だけでは調整できない業務が多く、制度と現場実態のズレが大きくなっています。
 また今回重要なのは、「残業を減らしたい企業」だけではなく、「もっと働きたい社員も一定数いる」という点です。つまり今後は、一律に労働時間を抑える時代から、健康確保を前提に、個人や業務実態に応じて柔軟に設計する時代へ移行し始めているとも言えます。
 中小企業では今後、属人化解消・多能工化・DX化・柔軟な労働時間制度活用を進めない限り、「人がいないのに残業もできない」という構造問題がさらに深刻化していく可能性が高いでしょう。

【今すぐやるべき対応】

・パート社員へ社会保険加入後の手取りを説明する
・「130万円を超えると損」という誤解を整理する
・助成金を活用して処遇改善を行う
・短時間前提の属人業務を見直す
・シフト依存を減らす業務設計を進める
・DX化による省力化を進める

「年収の壁」を上げても働き控えは続く

                                                         中小企業の人手不足が解消しない本当の理由    

 所得税の「103万円の壁」は160万円へ引き上げられた一方、社会保険の「130万円の壁」は残り続けている。結果として、パート労働者の働き控えはなお続いており、人手不足構造が固定化し始めている。
 厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2025年度
の1人当たり総実労働時間は月平均135.0時間となり、前年度比で1%減少した。10年前と比較すると約7%減少している。背景には、短時間で働くパート労働者の増加がある。2025年度のパート労働者数は前年比3%増の1623万人となった一方、パート労働者の月平均労働時間は78.7時間と前年比2%減少した。
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025年から所得税が発生する「103万円の壁」は160万円へ引き上げられた。しかし、社会保険料負担が発生する「130万円の壁」は残っており、依然として扶養を意識した働き控えが続いている。野村総合研究所の調査では、有配偶パート女性の57%が「年収の壁を意識して就業時間や日数を調整している」と回答した。
 また、総務省の労働力調査では、女性パート労働者899万人のうち、月1〜80時間で働く人が約400万人と全体の4割超を占めた。最低賃金上昇により、月80時間程度の勤務でも年収100万円前後に到達する状況となっており、「これ以上働けない」という心理が強まりやすくなっている。
 
政府は対策として、社会保険加入促進に向けた助成制度を拡充しているほか、2026年度からは130万円の壁の年収要件緩和も進める方針としている。一方で、働き方改革関連法による残業規制強化も労働時間減少に影響しており、企業側ではDX化や勤怠管理見直しによる対応が進められている。

日本経済新聞の記事です

 今回のニュースで重要なのは、「年収の壁を変えれば人手不足が解決する」という単純な話ではないことです。実際には、多くのパート労働者が意識しているのは所得税よりも、社会保険料負担・手取り減少・配偶者扶養喪失です。特に中小企業では「あと少し働いてほしい」と思っていても、「それ以上働くと損になる」という心理的ブレーキが強く働いています。
 さらに最低賃金上昇によって、短時間勤務でも壁に到達しやすくなっているため、“人が足りないのに勤務時間を増やせない”という矛盾が強まっています。一方で、企業側も、シフト依存運営・属人的配置・短時間前提の業務設計から抜け出せていないケースが多くあります。    
 今後は単に「もっと働いてほしい」ではなく、社会保険加入後の手取り説明・働き方の選択肢整理・業務分担見直し・DXによる省力化まで含めた設計が必要になります。特に中小企業では「壁対策=制度問題」だけではなく、「少人数で回る組織設計」そのものが問われ始めています。 

【今すぐやるべき対応】

・パート社員へ社会保険加入後の手取りを説明する
・「130万円を超えると損」という誤解を整理する
・助成金を活用して処遇改善を行う
・短時間前提の属人業務を見直す
・シフト依存を減らす業務設計を進める
・DX化による省力化を進める

フランチャイズでも“雇用主”とは限らない
                                               
QBハウス訴訟で裁判所が示した「使用者性」の判断    

 QBハウスの店舗で働く理美容師らが、本部運営会社にも未払割増賃金の支払いを求めた裁判で、東京地裁は「フランチャイズ本部との雇用契約関係」を否定しました。名称やブランドだけでは使用者性は認められず、“誰が採用し、誰が指揮命令していたか”が重視されています。


QBハウス店舗で勤務していた理美容師ら8人が、
・店舗運営を委託されていた個人事業主
・QBハウス運営会社 の双方に対して、未払割増賃金などを請求した事案です。
原告側は、
・「エリアマネージャー」という肩書
・QBブランド使用
・採用書類
・求人募集などから、本部運営会社との雇用契約関係も成立していると主張しました。しかし東京地裁は、

・店舗運営者は独立した事業者
・採用権限は店舗運営者側
・本部が採用に関与した証拠はない
・「エリアマネージャー」という名称だけでは代理権を示さないとして、本部運営会社との雇用契約成立を否定しました。
 
一方で、店舗運営者側については未払割増賃金等の支払いを命じ、一部では固定残業代の有効性も否定されています。

【 ポイント整理】

・フランチャイズ本部の使用者性が争われた事案
・裁判所は本部との雇用契約成立を否定
・「エリアマネージャー」の肩書だけでは代理権は認められず
・採用関与の有無が重要視された
・誰が採用し、誰が雇用管理していたかがポイント
・ブランド共有だけでは雇用主とは認められない
・固定残業代は個別事情で有効・無効が分かれた
・実態に基づく「使用者性判断」が重視されている


労働新聞社の記事です

 この判決は、「名前」や「ブランド」ではなく、“実際に誰が管理していたか”を重視した判決です。中小企業でも、業務委託・店舗委託・FC展開・個人事業主活用を行うケースは増えています。しかし現場では、名刺は会社名・求人は本部ブランド・ユニフォームも共通・顧客からは本部社員に見えるという状態になりやすく、実態整理が曖昧なまま運営されているケースも少なくありません。
 この状態で、採用指示・勤務シフト指示・給与決定・人事評価・懲戒判断などに本部が深く関与すると、「実質的使用者」と評価されるリスクが高まります。特に近年は、「契約書上どうなっているか」より、“実態として誰が支配・管理していたか”が強くみられる傾向があります。また、本件では固定残業代の有効性も争われています。同じ会社でも、説明方法・合意形成・契約内容によって有効・無効が分かれており、固定残業代制度の運用リスクも改めて示された形です。
 フランチャイズや業務委託を活用する企業ほど、「境界線管理」が重要になります。
つまり、どこまで本部が関与するのか・誰が採用責任を持つのか・誰が労務管理主体なのかを曖昧にしないことが重要です。
 人手不足時代では「委託すれば責任も切り離せる」とは限りません。むしろ、委託・FC・個人事業主活用が増えるほど、“実態管理”の重要性は高まっています。 

【今すぐやるべき対応】

・業務委託契約内容を見直す
・採用主体を明確化する
・求人広告の表記を整理する
・本部と委託先の権限範囲を明確化する
・指揮命令系統を整理する
・固定残業代制度を再点検する
・雇用契約書・労働条件通知書を見直す
・「実態」と「契約」が一致しているか確認する

新卒一括採用から“即戦力採用”へ。

                                         キャリア採用拡大で中小企業に求められる組織変革とは。    

 学情が企業・団体の人事担当者を対象に実施した調査によると、キャリア採用を「現在実施している」と回答した企業は83.1%となり、前年より6.0ポイント増加しました。 
 また、2026年度の採用活動では、「キャリア採用の割合が新卒採用より多い」と回答した企業が41.8%となり、調査開始以来初めて「新卒採用中心」を上回る結果となりました。
 
さらに、2026年度にキャリア採用人数を「前年度より増やす予定」と回答した企業は26.9%となっており、キャリア採用拡大傾向が続いています。
 
背景には、慢性的な人手不足や即戦力ニーズの高まり、若手採用難などがあると考えられます。

【 ポイント整理】

・キャリア採用実施企業は8割を超え、過去最高水準となった。

・「新卒中心採用」から「即戦力採用」へ流れが変化している。

・企業は“育成前提”より“すぐ戦力化”を重視し始めている。

・人手不足により、「育てる余裕がない」企業が増えている。

・キャリア採用比率増加は、組織の多様化・価値観の複雑化も招く。

・今後は「採る力」だけでなく、「定着させる力」が重要になる。


HRZineニュースの記事です

 この調査は、「大企業が中途採用を増やしている」。という話だけではありません。
 むしろ中小企業にとって重要なのは、”これまで中途採用だけでも何とか回っていた組織が、回らなくなり始めている”。という点です。
 以前は、
・人手不足でも何とか現場で教える。
・見て覚える。
・空気を読んで慣れる。
・ベテランがカバーする。
というやり方でも成立していました。しかし現在は、

・即戦力人材の奪い合い。
・若手不足。
・管理職不足。
・教える側の余裕不足。
が同時に起きています。その結果、「採った後に現場任せ」。では定着しなくなっています。
 特に中小企業では、
・業務が属人化している。
・マニュアルがない。
・人によって教え方が違う。
・評価基準が曖昧。
・質問しづらい。
という状態が起きやすく、中途入社者ほど不安を感じやすくなります。中途採用者は経験者である一方、「会社のやり方」は未経験です。にもかかわらず、「経験者なんだから分かるでしょ」。という前提で受け入れてしまう企業は少なくありません。すると、思っていた会社と違う、何が正解かわからない、相談先がない、評価基準が見えないという状態になり、早期離職につながります。今後、中小企業で重要になるのは“採用力”よりも、「誰が入っても一定水準で仕事を覚えられる仕組み」。です。
つまり、
・業務手順。
・判断基準。
・役割。
・評価基準。
・相談ルート。
を整理し、“人に依存しすぎない組織”へ変えていけるかが重要になります。
 人手不足時代は、「人を採えば何とかなる時代」ではなく、「人が定着できる組織かどうか」。が問われる時代になっています。

【今すぐやるべき対応(チェックリスト)】

・業務の棚卸しと不要業務の削減
・人手不足前提の業務設計へ転換
・属人化業務の標準化
・優先順位の明確化(やらない仕事の決定)
・制度の利用実態の可視化
・管理職評価に「負担管理・定着」を組み込む

制度を増やしても現場は楽にならない 
                
人手不足が“働き方改革を無効化している現実”    

 累計20,000社460万人以上の組織開発・人材育成を支援するALL DIFFERENT(オールディファレント)株式会社(所在地:東京都千代田区 代表取締役社長:眞﨑大輔)および「人と組織の未来創り」に関する調査・研究を行うラーニングイノベーション総合研究所は、2026年2月26~28日の期間で、ビジネスパーソン1,200人を対象に「働き方への価値観の変化」に関する意識調査を行いました。
本調査では、働き方改革やテレワークの普及などにより制度面は整備されている一方で、現場の働きやすさや負担軽減には十分につながっていない実態が明らかになりました。
 
特に、人手不足による業務負荷の増加が顕著であり、該当する社員の約8割が物理的または精神的な負担増を感じています。また、理想の働き方として「プライベートと両立しやすい働き方」が最も多く挙げられる一方で、その実現を阻む最大の要因が「業務過多・人手不足」であることが示されています。
 
さらに、働き方に対する価値観については約6割が「変わっていない」と回答しており、制度の変化が必ずしも現場の意識や実感に結びついていない状況も浮き彫りとなっています。

【 ポイント整理】

・働き方改革後も約半数が「変化を実感していない」

・約4割が働く負担が増加と回答

・人手不足による負担増は約8割が実感

・理想の働き方は「プライベートとの両立」

・最大の障壁は「業務過多・人手不足」

・制度と現場の実態に大きなギャップ

ALL DIFFERENT株式会社の記事です

 このテーマは非常に本質的で、「制度導入=働きやすさ向上ではない」という現実を示しています。多くの企業が、テレワーク、フレックス、有休取得促進といった制度を整備しています。しかし現場では、人が足りない、仕事量が減っていないため、制度が使えない状態になっています。
 今回の調査で最も重要なのは「人手不足=最大のボトルネック」という点です。どれだけ制度を整えても「仕事量 > 人員」であれば、現場は回りません。典型的な悪循環は以下です。

人手不足⇒業務過多⇒負担増⇒離職⇒さらに人手不足

このループに入ると、制度では止められません。 問題は「制度不足」ではなく「設計不足」です。企業が陥りがちなのは、制度を増やす、制度をアピールするという対応です。しかし本質は、業務量の設計、人員配置、優先順位です。ここを変えない限り、現場は楽になりません。

 重要なのは、やらない仕事を決める、業務を削減する、生産性を上げる です。
 人手不足の時代は「人を増やす」ではなく「仕事を減らす」経営が必要です。

【今すぐやるべき対応(チェックリスト)】

・業務の棚卸しと不要業務の削減
・人手不足前提の業務設計へ転換
・属人化業務の標準化
・優先順位の明確化(やらない仕事の決定)
・制度の利用実態の可視化
・管理職評価に「負担管理・定着」を組み込む

65歳雇用義務化で会社が止まる理由 
            問題は「雇用」ではなく「役割と処遇の未設計」
    

 本記事では、2025年4月の高年齢者雇用安定法の経過措置終了により、企業に対して希望者全員の65歳までの雇用確保が義務化されたことを背景に、各社で人事制度改革が進んでいる実態が示されています。
 
企業は定年延長や再雇用制度の見直しに加え、賃金制度や役職定年制度の再設計を進めており、従来の年齢基準ではなく役割や貢献度に応じた処遇へと移行する動きが広がっています。また、一部企業では給与水準の維持や選択定年制の導入など、シニア人材の活用を前提とした柔軟な制度設計も見られます。
 
一方で、実務上の課題としては、モチベーション維持や報酬水準の調整が挙げられており、単なる雇用延長ではなく、キャリア設計や職務設計の見直しが重要であると指摘されています。

【 ポイント整理】

・65歳までの雇用確保が全企業で義務化
・定年延長・再雇用制度の見直しが進行
・年齢基準から役割基準への処遇転換
・給与維持や選択定年制など柔軟制度が拡大
・シニア活用は進むがモチベーションと報酬が課題
・雇用延長だけではなく職務設計が重要

月間総務オンラインの記事です

 このテーマは「高齢者雇用の義務化」という法対応の話に見えますが、本質は組織設計の問題です。雇用を延ばすだけでは組織は回りません。法律に対応して雇用を延長するだけでは、役割が曖昧、責任が不明確、若手とのバランスが崩れるといった問題が発生します。結果として、組織全体の生産性が下がるケースも少なくありません。
 最大の論点は「処遇」ではなく「役割」です。賃金をどうするかに議論が集中しがちですが、本来の論点は何を担ってもらうのか、どの責任範囲にするのか、どう評価するのかです。ここが曖昧なままでは、給与を上げても下げても不満が残ります。

 シニア活用は「戦略」か「コスト」かで結果が変わります。先進企業は、経験の活用、技術伝承、組織安定化という目的で制度を設計しています。一方で人手不足の穴埋め、法対応だけで進めると、現場負担と不満が増えます。
 重要なのは、60歳以降の役割設計、評価制度との連動、若手との役割分担です。これを設計しないまま制度を導入すると、「人はいるが回らない組織」になります。 

【今すぐやるべき対応(チェックリスト)】

・60歳以降の職務・役割を明確に定義する
・年齢ではなく役割ベースの賃金制度へ移行する
・再雇用時の処遇変更理由を明確にする
・シニア人材の活用方針を経営戦略として定める
・若手育成とのバランスを設計する
・キャリア後半の研修やリスキリング機会を提供する

AIを入れても組織が変わらない本当の理由
            
マネジメントが変わらなければ生産性は上がらない    

 本調査では、企業におけるAI活用は着実に進んでおり、業務効率化や生産性向上といった成果を実感する企業が増えている一方で、マネジメントや組織運営の変革は追いついていない実態が明らかになりました。
 
AIを活用している層では、業務の質向上や意思決定のスピード向上、新たな業務機会の拡張などのポジティブな変化が顕著に見られます。しかしその一方で、AIはあくまで業務推進や情報処理の領域に強みを持ち、感情や動機づけといった人間的なマネジメント領域では依然として人の役割が重要であることも示されています。
 
また、AI活用は個人レベルから組織レベルへ広がりつつあるものの、制度設計や評価、目標設定といったマネジメント基盤は未整備な企業が多く、組織全体としての成果最大化には至っていない状況です。AIの効果を最大化するためには、単なる導入ではなく、組織全体での活用設計と役割分担の再構築が求められています。

【 ポイント整理】

・AI活用は個人から組織レベルへ広がりつつある
・業務効率化だけでなく質向上や意思決定速度向上にも寄与
・AIは業務推進には強いが感情マネジメントは人が優位
・活用度と利用頻度が成果実感を左右する
・制度や評価の整備は遅れている
・AI導入だけでは組織全体の生産性向上にはつながらない

PRTimesに掲載されていたリクルートマネジメントソリューションズの記事です

 この調査の本質は、「AI導入=生産性向上ではない」という点にあります。AIは“業務”を変えるが、“組織”は変えません。AIを入れることで、個々の業務は確実に効率化します。しかし、組織としての成果は、役割分担、評価基準、意思決定構造が変わらなければ上がりません。多くの企業はここを変えずにツールだけ導入している状態です。
 AIは、選択肢の提示、・情報整理、業務推進には強みがあります。その結果、マネジャーに求められる役割は、意思決定定、動機づけ、関係性構築にシフトします。つまり「管理」ではなく「人を動かす力」が問われる時代になります。
 調査でも明確ですが、高度な活用、・高頻度利用、この両方が揃って初めて成果が出ています。単に導入しただけ、たまに使うだけでは、組織としての変化は起きません。
 社長がやるべきは「AI導入」ではなく「構造改革」です。重要なのは
・どの業務をAIに任せるのか
・人はどこで価値を出すのか
・評価をどう変えるのか
という設計です。ここを決めないまま進めると、現場がバラバラに使うだけで終わります。

 

【今すぐやるべき対応(チェックリスト)】

・AI活用の目的を「業務効率化」から「組織成果」に引き上げる
・人とAIの役割分担を明確にする
・AI活用を評価制度や目標設定に組み込む
・活用事例を共有し、組織全体での再現性を高める
・マネジメント層に対する役割再定義と教育を実施する

裁量労働制が機能しない会社の正体。
          
制度ではなく「評価への不信」が組織を止めている    

 本レポートでは、裁量労働制や副業・兼業、テレワークといった自律的な働き方の成否は、制度設計そのものではなく「人事評価制度への信頼」に大きく依存していることが明らかになりました。
 
特に、自社の評価制度を信頼している層では裁量労働制の肯定率が90.6%に達する一方、信頼していない層ではわずか2.7%にとどまり、その差は34倍に及びます。また、経営層と実務層の間には制度に対する期待のギャップがあり、現場ほど実効性に対して慎重な姿勢を示しています。
 
さらに、裁量労働制は単独ではなく、副業・兼業やテレワークといった「時間・所属・場所」の自由とセットで認識されており、働き方全体の設計が求められています。加えて、法改正に対する認知度が高いほど、制度への信頼と肯定が高まるという「認知→信頼→肯定」の構造も確認されています。

【 ポイント整理】

・裁量労働制の受容は評価制度への信頼に強く依存している。
・信頼層と不信層で肯定率に34倍の差がある。
・経営層と現場で制度期待に大きなギャップがある。
・裁量労働制は副業・兼業、テレワークと一体で認識されている。
・法改正の認知が制度への信頼と肯定を高めている。
・長時間労働防止については約半数が形骸化を懸念している。

TeamSpiritの記事です

 このレポートは、「制度を入れても組織が変わらない理由」を非常に本質的に示しています。裁量労働制は自由度の高い制度ですが、その分「会社が公平に評価しているか」が問われます。評価に不信がある状態で導入すると、「自由に働けと言われるが評価は不透明」という不満を生みます。制度そのものではなく、信頼の有無で成否が決まる典型例です。
 調査でも明確ですが、経営層は制度に期待し、現場は実効性に懐疑的です。この状態で導入すると、制度はあるが使われない、現場が形だけ合わせる、結局従来運用に戻るという結果になります。制度導入の問題ではなく、認識統一の問題です。
 裁量労働制だけを入れても機能しません。評価制度、副業制度、テレワーク、労働時間管理これらが一体で設計されて初めて意味を持ちます。部分最適の制度導入は、混乱を生みます。 

 レポートでも示されている通り、
・評価制度への信頼
・制度の理解
・情報の透明性
 この3つが揃わない限り、制度は機能しません。特に「認知→信頼→肯定」という流れは実務的にも非常に重要で、説明不足のまま制度を入れると失敗します。

 

【今すぐやるべき対応(チェックリスト)】

・裁量労働制導入前に評価制度の信頼性を点検する。
・評価基準と判断プロセスを明文化し共有する。
・経営層と現場の認識ギャップを把握する。
・制度を単体ではなく働き方全体で設計する
・法改正内容をわかりやすく社内に周知する。
・ITやデータを活用し、労働時間と健康管理を可視化する。

若手をAIで置き換える会社は、10年後に回らなくなる。

 

いま起きているのは省力化ではなく「スキル継承の断絶」。

 本記事では、AI導入が進む一方で企業側の人材戦略や業務再設計が追いついておらず、将来的なスキル継承に深刻な断絶が生じるおそれがあると指摘しています。
 労働者の間では、自分の仕事が2030年までに消滅する、または大きく変わると感じる人が急増しており、多くがリスキリングの必要性を認識しています。しかし、企業側ではAIが職務に与える影響を評価するスキル監査の実施率が低く、再教育や配置転換の仕組みも十分に整っていません。
 
特に問題なのは、若手採用の縮小です。企業がエントリーレベル業務をAIで代替することで、将来の中核人材を育てる入口が細くなり、数年後に必要なスキルを持つ人材が社内にいないという事態を招く可能性があります。また、現場では従業員が独自にAIを使い始めている一方、企業全体としてワークフローを再設計できていないため、組織としての生産性向上につながりにくい状況も示されています。

【 ポイント整理】

・2030年までに自分の仕事が消える、または大きく変わると考える労働者が
 急増している。

多くの労働者がリスキリングの必要性を感じている。
企業のスキル監査実施率は26%にとどまっている。
・再教育や配置転換の経路を整備している企業も少数。
若手採用需要は低下しており、育成パイプラインの細りが懸念されている。
・現場主導の「勝手AI」は進んでいますが、全社的な業務再設計は進んでいない。

Itmediaの記事です

 このテーマの本質は、AI導入そのものではなく、組織が将来の戦力をどう育てるかにあります。 若手を減らすことは、将来の管理職候補を減らすことです。企業が若手の定型業務をAIで代替すると、短期的には効率化しているように見えます。しかし、その業務を通じて身につける基礎力、業務理解、判断の積み重ねまで失われると、将来の中堅層や管理職層が育たなくなります。これは単なる採用問題ではなく、組織の持続性の問題です。
  AIで代替できる業務と、人が育つ工程は一致しません。経営側は、反復作業や補助業務をAIで置き換えればよいと考えがちです。ですが、若手にとってはその工程こそが、業務の全体像を理解し、言葉の使い方や判断の型を学ぶ入口であることが少なくありません。入口を消すと、数年後に「経験者がいない」という状態になります。
 今必要なのは、AI導入ではなく仕事の再設計です。調査でも示されているように、現場では個別にAI利用が進んでいますが、企業としてワークフローを見直せていないケースが多くあります。この状態では、一部だけが効率化し、組織全体の成果にはつながりません。AIを導入するなら、どの仕事をAIに任せ、どの仕事で人を育てるのかを整理する必要があります。 
 人手不足時代ほど、育成の断絶は致命傷になります。若手採用を削り、既存人材の再教育も不十分なままAIに頼ると、短期的な省力化の代償として、将来の人材基盤が崩れます。人手不足の時代には、採れないこと以上に、育たないことのほうが深刻です。
 

【今すぐやるべき対応(チェックリスト)】

・AIで代替する業務と、人材育成に必要な業務を切り分ける。

・若手の育成工程を棚卸しし、どの経験を残すべきか整理する。

・職種別にスキル監査を行い、将来不足する能力を可視化する。

・再教育や配置転換のルートを制度として整備する。

・現場の個別利用に任せず、全社の業務フローを再設計する。

生成AIを入れても会社が変わらない理由。
    
成果を分けるのは「ツール」ではなく業務標準化と社内ナレッジ

 株式会社wib(本社:東京都台東区小島、以下 当社)は、企業全体で生成AIを導入し、その活用を推進する立場にある全国の20代〜50代の経営者・役員・会社員500名を対象に、組織内におけるAI活用の実態調査を実施しました。企業における生成AI導入は進んでいるものの、多くの企業ではメール作成や情報収集など、個人作業の効率化にとどまっており、組織全体の生産性向上には十分つながっていない実態が示されました。
 
一方で、導入効果が高い企業には明確な共通点がありました。それが、業務手順の標準化と、社内ナレッジの蓄積・整理です。成果を上げている企業では、誰が見てもわかる業務マニュアルや、部署単位で定着した共通手順が整備されており、さらにAIが参照できるように社内資料が集約・更新されています。
 
逆に、成果が出ていない企業では、業務手順が人によって異なっていたり、必要な情報が各部署や個人に散在していたりして、AIが活用しにくい環境になっています。生成AIの成果は、ツールの性能だけでなく、会社側の業務設計と情報整備の質に大きく左右されることが明らかになりました。

【 ポイント整理】

・生成AI導入企業の7割超が一定の成果を感じている。
・ただし活用の中心は、メール作成や情報収集など個人業務に偏っている。
・高い成果を出す企業では、業務手順の標準化が進んでいる。
・成果企業では、社内ナレッジの集約と更新も進んでいる。
・成果が出ない企業では、業務が属人化し、資料も散在している。
・生成AI活用の成否は、ツール導入よりも業務基盤整備に左右される。


PR TIMES記載の株式会社wibの記事です

 この調査は、生成AI活用の本質が「AI導入」ではなく「組織整備」にあることを示しています。 AIで成果が出ない原因は、現場ではなく経営設計にあります。多くの企業では、AIを入れれば自動的に生産性が上がると考えがちです。しかし実際には、業務フローが定まっていない会社では、AIも何を基準に支援すべきか判断できません。つまり、AIが機能しない原因は、現場の努力不足ではなく、経営側の業務設計不足にあることが少なくありません。
 業務のやり方が担当者ごとに違い、知識が個人の頭の中にしかない会社では、AIに渡せる情報が存在しません。この状態では、AIは一時的な文章作成ツールにはなっても、組織の生産性を上げる仕組みにはなりません。AI活用の前提は、まず属人化を減らすことです。
 成果を出している企業は、AIを特別な魔法の道具として扱っていません。むしろ、業務手順を明文化し、過去の知見や資料を整理し、誰でも再現できる状態を作ったうえでAIを活用しています。これは、AI活用というより、組織づくりそのものです。
 また、社長や一部社員しかわからない仕事が多い会社では、AI以前に組織が安定しません。逆に、業務が標準化され、知識が蓄積されていれば、担当変更や人材入替にも強くなります。その結果として、社長が細かい現場判断から離れ、経営業務に集中しやすくなります。

【今すぐやるべき対応(チェックリスト)】

・AI導入の前に、主要業務の流れを棚卸しする。
・担当者ごとに異なるやり方を整理し、標準手順を作成する。
・社内資料や過去事例を集約し、検索しやすい状態に整える。
・AIに入力してよい情報と禁止情報のルールを定める。
・現場任せではなく、経営課題としてAI活用の目的を明確にする。

「長時間働くほど生産性が低い国」日本
 
ドイツに36年遅れた働き方の構造問題とは。

 本記事では、労働時間が短いドイツが長時間労働の日本をGDPで上回った背景として、働き方の構造的な違いを指摘している。

 

ドイツでは労働時間が長年にわたり減少し続けている一方で、日本はコロナ禍後に再び増加傾向にある。ドイツの短時間労働は単なる文化ではなく、法律による厳格な規制と社会的な価値観によって支えられている。

 

特に労働時間の上限規制や休息時間の確保、日曜労働の原則禁止などが徹底されており、これにより効率的な働き方が前提となっている。一方、日本では長時間労働が依然として許容されており、生産性向上よりも労働時間で補う構造が残っている。

【 ポイント整理】

・ドイツは労働時間が短いにも関わらずGDPで日本を上回った
・ドイツの労働時間は長期的に減少し続けている
・日本はコロナ後に労働時間が再び増加傾向
・ドイツは法律による労働時間規制が厳格
・休息時間や休日労働の制限が徹底されている
・日本は長時間労働に依存した構造が残っている


DiamondOnlineの記事です

 このテーマは単なる国民性の違いではなく組織設計の問題として捉えるべきと思います。
長時間労働が発生する原因は、業務の属人化・役割分担の不明確さや非効率な業務プロセスにあります。働いている時間が長いこと自体が問題ではなく、短時間で成果を出せない構造が問題です。
 労働時間規制について考えると、日本にも労働時間規制は存在しますが、例外運用が常態化、現場任せの管理、経営の意思として徹底されていない等がドイツと大きく異なります。
 ドイツの特徴は、時間制約が前提、無駄の排除が徹底、業務の標準化です。時間を制限することで、逆に効率化が進む構造になっています。
 現在の日本企業は、人手不足、採用難、長時間労働が同時に発生しています。
 これは、
少ない人員で回そうとする⇒結果として長時間労働になる⇒さらに人が辞める
という負の循環に結びつきがちです。働く前提を変える「時間を制約する中で働く」ことをドイツから学ぶべきですし、そのために組織設計をどうすべきかを経営者は真剣に考えるべきと思います。

【今すぐやるべき対応(チェックリスト)】
・業務の標準化と分業化を進める
・長時間労働を前提としない業務設計に変更する
・管理職のマネジメント役割を再定義する
・労働時間の上限を実質的に機能させる
・時間ではなく成果で評価する制度へ見直す

週40時間超」で出生意欲が半減 

              長時間労働が“企業の未来”を壊す構造とは

 本記事では、長時間労働が少子化と労働力不足の根本原因の一つであると指摘している。特に、週40時間を超える労働により「子どもを持ちたい意欲が大きく低下する」という研究結果が示され、長時間労働が将来の労働力そのものの減少につながっていることが明らかになった。また、日本は少子化による労働力減少局面(人口オーナス期)にあるが、働き方を変えることで、育児・介護など制約のある人材も労働参加でき、労働力人口はむしろ増加している現状がある。そのため、特定の人材の残業に依存する従来型組織ではなく、チームで業務を分担し「時間内で成果を出す働き方」へ転換することが、持続可能な経営の前提であると提言している。

【ニュースの要約】
・週40時間超の労働で出生意欲が大きく低下する
・長時間労働が将来の労働力減少を加速させている
・日本は人口減少局面でも労働力人口は増加している
・その要因は働き方改革による多様人材の参画
・残業依存型組織は持続不可能
・チームで業務を回す働き方への転換が必要


LogmeBusinesの記事です

 現在の人手不足は、労働力が足りないのではなく “選ばれていない企業”が生まれている状態です。特に、育児中人材、介護を抱える人材、若年層は、長時間労働前提の企業を避けます。結果として「採用できない構造」が固定化します。
  長時間労働で支えるモデルは、若年人口減少、高齢化、ライフイベントの多様化により成立しなくなっています。「頑張れる人に依存する組織」は確実に行き詰まります。
 重要なのは個人の意識ではなく、業務分担設計、情報共有構造、権限設計です。
本質は「チーム設計」の問題なのです。
 今回の研究結果は極めて重要で、長時間労働=将来の労働力減少を意味します。つまり、
 自社の働き方が、自社の将来の採用難を生んでいるという構造です。

【今すぐやるべき対応(チェックリスト)】
・残業前提の業務設計を見直す(業務の分解・標準化)
・属人化業務の可視化と分散化
・「時間内成果」を評価する制度へ転換
・育児・介護人材を前提とした業務設計に変更
・管理職の役割(配分・調整)を再定義

バーンアウトが組織を壊す理由|中小企業は「リーダーの働き方」を見直すべき

バーンアウトは個人の問題ではなく、経営課題に変わっています。

 バーンアウト(燃え尽き症候群)は従来、個人の一時的な不調と捉えられていましたが、現在では企業の人材定着や業績に直結する経営課題へと変化しています。調査によると、専門職の約8人に1人が疲弊を主な退職理由としており、長時間労働や過度な負荷がその背景にあります。また、多くの企業がバーンアウトの影響を懸念している一方で、管理職へのメンタルヘルス支援は十分に整備されていない実態も明らかになっています。
 さらに重要なのは、リーダー自身のバーンアウトが組織に与える影響です。経営層や管理職が過重労働を当然とする働き方を続けることで、その行動が組織全体の基準となり、結果として過度な負荷が常態化します。これにより、心理的安全性が低下し、離職やパフォーマンス低下を引き起こすリスクが高まります。
 
こうした状況から、企業には制度整備だけでなく、リーダー自身の働き方を見直し、持続可能な組織運営へ転換することが求められています。

【ニュースの要約】
・バーンアウトは経営課題として認識されている
・専門職の8人に1人が疲弊を理由に退職
・多くの従業員が残業や週末勤務をしている
・企業の約3分の2がバーンアウトの影響を懸念
・管理職向けメンタル支援は4分の1未満
・リーダー自身がバーンアウト状態にあるケースがある
・リーダーの行動が組織文化に影響する
・慢性的ストレスが意思決定や支援能力を低下させ
ForbesJapanの記事です

 「リーダー自身が働き方を変えましょう」いう記事です。リーダー自身が過重労働を続けている状態ではバーンアウトを防ぐために導入する様々な制度も意味を成しません。なぜなら、組織は「制度」ではなく「行動」で動くからです
・深夜のメール
・休まない働き方
・常に忙しい状態
これが「これが正しい働き方」というメッセージとして伝わります。結果として
 組織全体が疲弊する構造が生まれます。つまり バーンアウト対策は「制度」ではなく「経営者の行動」から始まるのです。

【今すぐやるべき対応(チェックリスト)】
□ 経営者・管理職の労働時間を把握する
□ 深夜・休日対応のルールを見直す
□ 優先順位の明確化を行う
□ 管理職の負荷を再設計する
□ 外部コーチ・相談体制を検討する

人手不足倒産が増加する理由|中小企業は「採用ではなく組織設計」を見直すべき

人手不足を原因とする倒産が増加しています。
採用では解決できない「構造的な問題」が顕在化しています。

 東京商工リサーチの調査によると、人手不足を要因とする倒産が増加傾向にあり、企業経営に深刻な影響を与えていることが明らかになりました。人手不足の背景には、少子高齢化による労働力人口の減少や採用競争の激化があり、特に中小企業では人材確保が難しくなっています。
 
また、人手不足は単に採用人数の問題にとどまらず、退職者の増加や業務の属人化、長時間労働の常態化といった複合的な要因と結びついています。その結果、事業の継続が困難となり、倒産に至るケースが発生しています。
 
このような状況から、企業には採用活動の強化だけでなく、既存人材で業務を回せる体制づくりや、業務の見直しなど、組織全体の再設計が求められています。

【ニュースの要約】
・人手不足を原因とする倒産が増加している
・中小企業での影響が大きい
・労働力人口の減少が背景にある
・採用難が継続している
・退職者の増加が経営に影響している
・業務の属人化が進んでいる
・長時間労働の問題が発生している
・人手不足が事業継続リスクとなっている

東京商工リサーチの記事です

 全ての企業が参照すべきニュースです。人手不足が深刻さを増しているという話です。
もちろん採用活動を見直すことは必要ですが、それと同様に、というよりもその前に中小企業が取り組むべきことは「人がいなくても回る設計になっていない」状況を改善することです。
 人手不足を「採用を増やす」「外注を増やす」ことで対応しようとする企業は多いですが、「人が減ると止まる組織」のままでは、意味がありません。
本来必要なのは「業務の標準化」「役割の明確化」「属人化の排除」です。つまり 「人数」ではなく「構造」の問題として捉えて改善を図るべきなのです。
【今すぐやるべき対応】
□ 業務の属人化を洗い出す
□ 代替できない業務を特定する
□ 業務の標準化を進める
□ 人に依存しない業務設計を行う
□ 管理職に業務改善の役割を持たせる

バックオフィスが疲弊する理由は何か 中小企業は「名もなき業務の構造」を見直すべき

DXを進めても業務は減らない――原因は「名もなき業務」にあります。
見えない非効率が組織全体の生産性を下げています。

 SmartHRの調査によると、労務担当者の約半数が1日に3回以上の業務中断を経験しており、その主な要因は従業員からの問い合わせ対応や督促など、いわゆる「名もなき業務」であることが明らかになりました。企業では年末調整や労務手続きのデジタル化が進んでいるものの、その前後で発生する従業員とのやり取りが依然として大きな負担となっています。
 特に、店舗や工場などで働くノンデスクワーカーとの情報伝達においては、現場責任者を介した口頭伝達が多く、情報の遅延や認識のズレといった構造的な課題が顕在化しています。また、問い合わせの約88%はマニュアルを確認すれば解決できる内容であるにもかかわらず、情報の分かりにくさやアクセス性の低さが原因で、担当者への問い合わせが発生しています。
 
このような背景から、単なる業務のデジタル化だけではなく、従業員が自ら情報にアクセスし自己解決できる環境の整備が、組織全体の生産性向上に不可欠であると指摘されています。
ニュースの要約
・労務担当者の49%が1日3回以上の業務中断を経験している
・繁忙期には業務中断が70%に増加する
・業務中断の主因は「問い合わせ対応(88%)」
・「督促・リマインド(59%)」も主要因となっている
・問い合わせの88%は自己解決可能な内容である
・担当者は「調べるのが面倒」と認識
・従業員は「マニュアルが分かりにくい・見つからない」と認識
・繁忙期には60%が1日1時間以上をやり取りに費やす
・PCを持たない従業員との伝達は口頭依頼が69%
・伝言によるタイムラグや認識ズレが発生している
・情報の到達性・アクセシビリティに課題がある

SmartHRの記事(プレスリリース)です

・労務・総務部門が疲弊している企業
・DXを進めているが効果が出ていない企業
・ノンデスクワーカーが多い企業 
に特に参照いただきたい記事です。

 業務効率化をする際のスポットをあてるのは「業務量」ではなく「業務構造の欠陥」です。
多くの企業は「システムを導入する」「ペーパーレス化する」等で効率化を図ります。しかし実際には「その前後のやり取り」が増えることになります。つまり「作業」は減ったが「コミュニケーション負荷」は増える状態です。さらに情報が分散している、どこを見ればいいか分からない、理解しづらいという状況では「問い合わせが発生するのは当然」です。これは
 従業員の問題ではなく「情報設計の問題」です。本来は「聞かなくても分かる状態」を作る必要があります

【今すぐやるべき対応(チェックリスト)】
□ よくある問い合わせを可視化する
□ マニュアルを「誰でも分かる形」に再設計する
□ 情報の所在を一本化する
□ スマホからアクセスできる環境を整える
□ ノンデスクワーカー向け導線を設計する
□ 「問い合わせを減らす設計」に切り替える

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岡本 雅行

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中小企業の労務管理と人手不足解消をサポートする三軒茶屋の社会保険労務士